なぜ今、GENOVAは「VISION2026」を掲げたのか “医療インフラを支えるパブリックパートナー”という挑戦【前編】

医療を取り巻く環境は、いま大きな転換期を迎えています。
高齢化や人材不足、加速するDX。SNSやAIの普及によって医療情報は爆発的に増え、情報の海の中で、本当に必要な「正しい声」を届ける難しさは増すばかりです。
そうした時代に、私たちは単なる「仕組みの提供者」で終わっていいのか。
医療機関、患者、そして社会。バラバラになりがちな三者を結び、共に未来を創る「医療のパブリックパートナー」でありたい。
GENOVAが策定した「VISION2026」には、社会の公器としての覚悟が込められています。
今回、その策定に携わった取締役執行役員の井上祥に、ビジョンに込めた背景と、GENOVAが見据える社会に貢献する存在へと進化する未来について聞きました。
医療と社会をつなぐ役割を、どう事業に落とし込むのか
― まず、井上さんの現在の役割について教えてください。
取締役執行役員として事業推進室を管掌し、医療・学術領域でのプレゼンス向上とパブリックアフェアーズを担当しています。
GENOVAはこれまで、クリニック領域、特に歯科領域において強いプレゼンスを築いてきました。今後はその強みを土台にしながら、医療領域全体、特に学術領域での存在感も高めていくことが重要だと考えています。
医療界、アカデミア、行政との連携を強化しながら、GENOVAの取り組みを社会につなげ、社会に伝えていく。そうした役割を担っています。
アカデミアから見えていた、社会実装の難しさ
― GENOVAへ参画される以前には、どのようなキャリアを歩まれてきたのでしょうか?
これまで医学教育を専門に、EBM(根拠に基づく医療)をいかに社会実装するかというテーマを一貫して追求してきました。大学や学会での学術活動に加え、書籍の執筆や自治体での健康啓発プロジェクトなどを通じ、医療の質を担保するエビデンスを社会の仕組みに組み込む取り組みを15年にわたり続けてきました。
私には起業の経験もあり、ゼロから仕組みを立ち上げるベンチャーならではのスピード感や、迅速な意思決定の重要性も肌で感じてきました。
今回、ご縁があってGENOVAへ参画することとなりましたが、現在も横浜市立大学の特任准教授や、京都大学健康情報学の客員研究員などの学術活動を継続しています。多忙ではありますが、理論の最前線に身を置き続けること自体が、医療界の最新の課題を深く理解し、それをGENOVAの事業を通じて「実働するシステム」へと還元するうえで大きな意味を持っていると感じています。
EBMの社会実装を真に加速させるためには、医療機関・患者・社会をテクノロジーで結ぶ「医療インフラの最適化」が不可欠です。これまでの知見を活かし、アカデミアとの連携やパブリック・アフェアーズの強化を通じて、より質の高い医療環境を構築していきたいと考えています。
医療業界はいま、「情報」「新薬・技術」「AI」で大きく変わっている
― いまの医療業界を、どのように見ていますか?
医療は、情報に基づいて意思決定が行われる領域です。一方で、SNSやAIの普及によって医療情報は爆発的に増加し、科学的な正確性と社会実装の間に距離が生まれています。エビデンスがあっても、それが社会に適切に届かなければ、望ましい医療にはつながりません。
また、新薬や新しい治療の進歩は非常に速い一方で、日本ではドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの問題もあり、利用できるはずの医療が十分に届かない状況もあります。
さらにAIの進化は、医療の在り方そのものを変えつつあります。テクノロジーの進歩が加速する中で、医療と社会をつなぐ役割は、ますます重要になっています。
こうした変化の中で、医療情報や新しい医療を適切に社会につなぐ「医療インフラ」の必要性は、これまで以上に高まっていると感じています。
「良い取り組みをしても、十分に伝わっていない」
― 今回「VISION2026」を策定した背景には、どのような問題意識があったのでしょうか?
背景にあったのは、「良い取り組みを行っていても、社会に十分に伝わっていないのではないか」という問題意識です。
GENOVAはこれまで、クリニックDXや医療情報の発信などを通じて、医療を支える基盤づくりに取り組んできました。ただ、その価値が必ずしも社会や医療界に十分に認識されているとは言えませんでした。
一方で、海外の医療系グローバル企業では、パブリックアフェアーズや社会との対話を担う組織を立ち上げ、企業の役割や社会的価値を積極的に発信する動きが広がっています。医療は社会との関係性が非常に重要な領域です。だからこそ、企業としての姿勢や方向性を明確に示すことが求められています。
こうした背景から、GENOVAとしても「医療インフラを支えるパブリックパートナー」としての役割や目指す方向性を明確にし、社内外に共有するために策定したのが「VISION2026」です。
創業20年で見えてきた、GENOVAの次の役割
― このタイミングでビジョンを明確に発信しようと考えた理由を教えてください。
GENOVAが創業20年を迎え、事業や役割が、これまでの延長線上から一段進んだタイミングだと考えたためです。
これまではクリニック領域を中心に事業を展開してきましたが、医療領域全体や社会との接点が広がり、求められる役割も変化してきています。単なるサービス提供ではなく、医療を支える基盤としての役割がより明確になってきました。
また、社内外のステークホルダーも増え、GENOVAがどこを目指す企業なのかを共有する必要性も高まっています。そうした事業の広がりと役割の変化を踏まえ、あらためて方向性を明確に示すタイミングとして、VISION2026を発信しました。
GENOVAの公式サイトでも、VISION2026は「リアル×デジタルで、医療と社会をつなぐ」ことを掲げ、社会課題の解決に働きかける企業像を打ち出しています。

議論の中心にあったのは、“リアルの強み”をどう未来につなぐか
― 策定にあたって、印象に残っている議論はありますか?
印象に残っているのは、創業から約20年にわたり事業を続けてきた平瀬社長の思いを、あらためて言語化していく議論です。
GENOVAはこれまで、クリニックの現場と直接向き合いながら成長してきました。この20年で培ってきた医療機関との関係性や現場理解といった“リアルの強み”は、AIやデジタルが進む時代においても、むしろ重要な価値になるのではないかという話になりました。
また、GENOVAを単なるサービス提供企業ではなく、社会や公共にとって意味のある存在にしていきたいという点も、平瀬社長と繰り返し議論したポイントです。医療は社会インフラに近い領域であり、企業としての役割も、より公共性を意識したものになっていく必要があります。
こうした議論を通じて、20年で培ってきたリアルの強みを基盤に、AI時代にも価値を発揮し、社会にとっての医療インフラを目指すという方向性が、VISION2026の中核になっていきました。
「医療インフラを支えるパブリックパートナー」という言葉に込めた意味
― 「医療インフラを支えるパブリックパートナー」という言葉には、どのような意味が込められているのでしょうか?
「医療インフラを支えるパブリックパートナー」という言葉には、医療の社会課題を発信し、現場を支える仕組みを届ける存在になるという意味を込めています。
医療は診療行為だけで成り立つものではなく、情報や導線、物流といった基盤によって支えられています。GENOVAはこれまで、医療情報の発信やクリニックDXに加え、物流なども含めて医療機関を支える仕組みを構築してきました。
医療の社会課題を社会に伝え、必要な情報やサービスをラストワンマイルまで届ける。そうした役割を担う基盤として、医療機関・患者・社会をつないでいく存在を「医療インフラを支えるパブリックパートナー」と表現しています。
医療と社会をつなぐ基盤になる。
その言葉の背景には、GENOVAが20年かけて育ててきた“現場との距離の近さ”と、その価値を次の時代にどう広げていくかという意志がありました。
後編では、この「VISION2026」の先に、GENOVAがどのような医療と社会の未来を描いているのかを深掘りしていきたいと思います。
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