医療と社会をつなぐ基盤へ ーGENOVA「VISION2026」が描く未来【後編】

前編では、複雑化する社会の中でGENOVAが自らを「医療インフラを支えるパブリックパートナー」と再定義した、その志の背景を伺いました。単なるシステムの提供者を超え、社会の公器として医療のあり方を問い直す。その覚悟の先にはどのような景色を描いているのでしょうか。
後編では、ビジョンを具現化する「3つのPROMISE(約束)」を軸に、GENOVAが挑む具体的なアクションに迫ります。
「医療の社会課題を届ける」「医科と歯科の連携を実現する」、そして「DX × 物流で止まらない地域医療のインフラを構築する」これら3つの約束の先にどのような未来を見据え、現在の事業がその実現とどうつながっていくのか。
パブリックパートナーとして、私たちが「健康な社会」に向けて一歩踏み出す、その具体的な設計図を掘り下げます。
医療は、医療機関の中だけで完結しなくなる
― VISION2026で描いている、GENOVAが目指す医療と社会の未来像について教えてください。
医療が医療機関の中だけで完結するものではなく、社会とより密接につながっていく未来を描いています。
AIやデジタル技術の進歩により、医療情報はより身近になり、予防や早期受診、治療選択など、医療と日常生活の距離は縮まっていきます。一方で、新薬や新しい治療の登場、ドラッグ・ラグの問題など、医療と社会の間には依然としてギャップも存在しています。こうした変化の中で、医療と社会をつなぐ基盤の重要性はさらに高まっていきます。
その中でGENOVAらしさとして大切にしているのが、医科と歯科を含めた幅広い医療領域を横断して支えていくという視点です。これまで培ってきたクリニック領域、特に歯科領域での強みを生かしながら、医科との連携を進めることで、より包括的に医療を支える仕組みを構築していきたいと考えています。
医療と社会をつなぎ、領域を横断して支える基盤としての存在になること。それがVISION2026で描いている未来像です。
高齢化社会で問われる、“ラストワンマイル”をどう支えるか
― 日本社会が直面している医療課題に対して、GENOVAはどのような価値を提供できると考えていますか。
日本は急速な高齢化と医療人材不足の中で、限られた医療資源をどう活用するかが重要な課題になっています。その中で鍵になるのが、地域のクリニックを含めた“ラストワンマイル”の医療をどう支えるかだと考えています。
GENOVAはこれまで、医科・歯科クリニックを中心にDXや情報発信を支援し、地域の身近な医療機関の機能向上を支えてきました。クリニックが適切に機能することで、病院への過度な集中を防ぎ、地域全体の医療提供体制の最適化につながります。
さらに、株式会社ASANO(以下、ASANO)の物流機能も含め、医療機関に必要なサービスや物資を安定的に届ける仕組みも重要な役割の一つです。情報だけでなく、実際の医療現場を支える基盤としての価値を提供できる点もGENOVAの強みだと考えています。
地域の医療機関を支えるラストワンマイルの基盤を整えることで、高齢化社会における持続可能な医療提供体制に貢献していきたいと考えています。
ビジョンは理想論ではなく、すでに事業の中にある
― 現在のGENOVAの事業は、このVISION2026とどのようにつながっているのでしょうか。
現在のGENOVAの事業は、いずれも医療を支える「インフラ」を構成する要素として位置づけられています。
例えば、医療情報の発信は医療の社会課題を可視化し、患者さんの適切な受診行動を支える役割を担っています。また、クリニックDXの領域では、医療機関の業務効率化や患者さんとの接点づくりを支え、地域医療の基盤強化につながっています。
さらに、ASANOの物流機能は、医療現場に必要な物資やサービスを安定的に届けるという、まさにラストワンマイルのインフラを担っています。
このように、情報を発信する機能、医療機関を支えるデジタル基盤、そして現場に届ける物流機能が組み合わさることで、医療と社会をつなぐ基盤が形成されます。現在の事業そのものが、VISION2026で掲げる「医療インフラを支えるパブリックパートナー」の具体的な構成要素になっていると考えています。
医療DXの本質は、「必要な人が、必要なときに、最適な医療にたどり着くこと」
― 医療DXやテクノロジーの進化は、今後の医療にどのような変化をもたらすと考えていますか。
医療DXやテクノロジーの進化は、「アクセシビリティの向上」に集約されると考えています。
時間的・空間的な制約を超え、最速・最短で最適な医療にたどり着く世界が現実になりつつあります。AIやデジタルの進化により、医療情報へのアクセス、受診導線、医療機関同士の連携が大きく変わり、医療はより社会に近い存在になっていきます。
一方で、テクノロジーが進歩するほど、現場と社会の間のギャップや情報格差も生まれやすくなります。だからこそ、リアルな医療現場とデジタルをつなぐ仕組みが重要になります。
医療DXの本質は、必要な人が、必要なときに、最適な医療にたどり着くことです。リアル×デジタルの融合により、医療機関・患者・社会をつなぎ、時間的・空間的な制約を超えて医療のアクセシビリティを高めていく。そうした変化が今後の医療に起きていくと考えています。
GENOVAの「VISION2026」でも、❝リアル×デジタル❞という考え方が中核に置かれています。

これから強化していきたいのは、パブリックアフェアーズ
― 今後、GENOVAとして特に力を入れていきたい領域はありますか?
今後特に力を入れていきたいのは、パブリックアフェアーズの領域です。
医療は制度や社会の理解と密接に関係しており、企業としても単にサービスを提供するだけでなく、医療の社会課題を発信し、議論を促していく役割が重要になっています。ドラッグ・ラグや医療人材不足、地域医療の課題など、医療を取り巻くテーマは社会全体で考えるべきものです。
海外の医療系企業では、パブリックアフェアーズの機能を強化し、社会との対話を進める動きが広がっています。GENOVAとしても、これまで培ってきた医療機関とのネットワークや情報発信の基盤を生かし、社会に対して医療課題を発信していく役割を担っていきたいと考えています。
また、学術領域や行政との連携を強化しながら、医療と社会をつなぐハブとしての機能を高めていくことも重要です。パブリックアフェアーズの取り組みを通じて、「医療インフラを支えるパブリックパートナー」としての役割をより明確にしていきたいと考えています。
学術と事業、その両方から医療と社会をつなぐ
― 井上さんご自身は、このビジョンの実現に向けてどのようなことを大切にしていますか?
大切にしているのは、GENOVAとしての事業活動と、公的・学術的な活動の両方を通じて、医療と社会をつなぐ役割を果たしていくことです。
現在も大学での研究・教育活動や学会活動、自治体での委員活動などを継続していますが、こうした場で得られる医療の課題や議論を、企業としての取り組みに還元することを意識しています。アカデミアと社会、そして事業をつなぐ視点を大切にしています。
また、横浜市立大学大学院の医学教育学で、恩師である後藤英司先生(当時の主任教授、現・名誉教授)や稲森正彦先生(当時の准教授、現・主任教授)から薫陶を受けた「メディカルサイエンスコミュニケーション」の考え方は、私の原点となっています。「科学的に正確な医療情報を、いかに分かりやすく社会へ届けるか」。その重要性は、今も私の活動の核をなしています。
医療の社会課題を丁寧に伝え、科学と社会の間にある距離を埋めていく。その役割を、事業と学術活動の両面から果たしていくことを大切にしています。
医療の未来は、社会全体で支えていくもの
― 最後に、「VISION2026」に込めた想いを、読者に向けてお願いします。
医療は今、大きな変化の中にあります。テクノロジーの進歩や新しい治療の登場により、医療はこれまで以上に社会と密接につながるものになっていきます。一方で、情報の格差やアクセスの課題など、医療と社会の間にはまだ多くのギャップも存在しています。
「VISION2026」には、そうしたギャップを埋め、医療と社会をつなぐ基盤となる存在を目指したいという思いを込めています。医療の社会課題を発信し、必要な情報やサービスをラストワンマイルまで届けることで、誰もが最適な医療にアクセスできる社会の実現に貢献していきたいと考えています。
GENOVAはこれまで20年にわたり、医療現場と向き合いながら事業を積み重ねてきました。そのリアルの強みを生かしながら、AI時代においても医療と社会をつなぐ医療インフラを支えるパブリックパートナーとして、価値を提供していきます。
医療の未来は、医療機関だけでなく、社会全体で支えていくものです。GENOVAもその一端を担いながら、持続可能な医療と健康な社会の実現に貢献していきたいと考えています。
【編集後記】
「VISION2026」という言葉だけを見ると、少し大きなテーマのように感じるかもしれません。
しかし今回、話を聞く中で印象的だったのは、そのビジョンが決して遠い未来の話ではなく、GENOVAがこれまで医療現場と向き合いながら積み重ねてきた事業や姿勢の延長線上にあるものだ、ということでした。
医療情報を届けること。
クリニックの現場を支えること。
必要なものを、必要な場所へ届けること。
一つひとつを見ると異なる取り組みに見えても、そこには一貫して「医療と社会をつなぐ」という強い意思があります。今回のインタビューを通じて、「医療インフラを支えるパブリックパートナー」という言葉には、そうしたGENOVAらしさが凝縮されているのだと感じました。
医療を取り巻く環境が大きく変わる今だからこそ、テクノロジーだけでも、現場だけでも届けられない価値がある。
リアルとデジタル、その両方を行き来しながら、医療と社会の間にある距離を少しずつ近づけていくこと。そこに、GENOVAが果たせる役割があるのかもしれません。
今回のインタビューが、GENOVAのこれからをより身近に感じていただくきっかけになればうれしいです。

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